遠方に住んでいる、あるいは体調不良やどうしても外せない用事があるなど、様々な事情で葬儀に参列できない場合、故人への弔意を示すための最も丁寧な方法の一つが、香典を「現金書留」で送ることです。しかし、ただ現金を郵送すれば良いというわけではありません。そこには、ご遺族の心に寄り添い、敬意を示すための、細やかなマナーが存在します。この作法を正しく理解し、実践することが、遠くにいても心を届けるための鍵となります。まず、現金は必ず「不祝儀袋」に入れます。裸のまま現金書留の封筒に入れるのは、最大のタブーです。不祝儀袋は、故人の宗教や包む金額に合わせて適切なものを選びます。表書きは「御霊前」や「御香典」とし、薄墨で自分の氏名を書きます。中袋には、包んだ金額と自分の住所、氏名を忘れずに記入しましょう。次に、現金書留を送るために郵便局へ行きます。郵便局の窓口で、現金書留専用の封筒を購入し、その中に不祝儀袋を入れます。この際、最も大切なのが「お悔やみ状」を同封することです。これは、香典だけを送りつける無機質な印象を避け、温かい気持ちを伝えるための、非常に重要な心遣いです。便箋一枚程度の短いもので構いませんので、「この度は〇〇様のご逝去の報に接し、心よりお悔やみ申し上げます」といったお悔やみの言葉、「本来であればすぐにでも駆けつけ、お見送りをさせていただきたかったのですが、やむを得ない事情により参列できず、誠に申し訳ございません」という参列できないお詫び、「ご遺族の皆様におかれましても、さぞご心痛のことと存じます。どうぞご自愛ください」といったご遺族をいたわる言葉などを綴ります。この手紙があるだけで、受け取ったご遺族の心に与える印象は全く異なります。宛名は、葬儀の喪主様宛に送るのが基本です。もし喪主が分からない場合は、「〇〇(故人名)様 ご遺族様」としても構いません。送るタイミングは、訃報を知ったらできるだけ早く、通夜や告別式に間に合うように送るのが理想ですが、間に合わない場合は、葬儀後一週間以内を目安に、ご自宅宛に送るようにしましょう。現金書留は、単なる送金手段ではありません。それは、あなたの弔意と敬意を、大切な人のもとへ届けるための、心の手紙なのです。