「現金書留」という言葉を聞くと、多くの人は葬儀に参列できない時の「香典」を思い浮かべるでしょう。しかし、弔事において現金書留が活用される場面は、実はそれだけではありません。葬儀後の様々な場面で、この安全で確実な送金方法は、人と人との心を繋ぐ大切な役割を果たしています。まず、葬儀が終わった後、四十九日や一周忌、三回忌といった「法事(年忌法要)」に、やむを得ず出席できない場合に、お供えの代わりとして現金を送る際に使われます。この場合の不祝儀袋の表書きは、四十九日を過ぎているため「御霊前」ではなく「御仏前」とするのが一般的です。もちろん、この際にも「法要に参列できず申し訳ありません」という旨を記した手紙を添えるのが丁寧なマナーです。次に、遠方で行われた葬儀に参列した際、ご遺族から「お車代」をいただくことがあります。その金額が、実際にかかった交通費を大幅に上回るような、ご遺族の過分なご配慮であった場合、後日その差額分を「お返し」するという形で、現金書留が使われることがあります。その際には、「この度はお心遣いをいただき恐縮です。過分に頂戴いたしました分をお返しいたします」といった手紙を添え、相手に気を遣わせないように配慮します。また、少し特殊なケースですが、葬儀の際に受付係などの大切なお手伝いをしてもらったにもかかわらず、慌ただしさの中で御礼を渡しそびれてしまった、という場合に、後日、御礼の現金と感謝の手紙を現金書留で送る、という使われ方もあります。さらに、故人が生前に属していた団体やサークルなどで、有志を募って香典とは別に「お見舞金」や「弔慰金」などを集め、代表者がご遺族に届ける場合がありますが、代表者が遠方に住んでいる場合などに、この現金書留が活用されることもあります。このように、現金書留は、単に香典を送るためだけのツールではありません。葬儀という大きな出来事をめぐる、様々な人間関係の中で生まれる「感謝」「配慮」「お詫び」といった、目に見えない心を、現金の形を借りて相手に届けるための、信頼性の高いコミュニケーション手段なのです。その時々の状況に応じて、この方法をスマートに使いこなせることは、豊かな人間関係を築く上での、一つの大切なスキルと言えるでしょう。
香典以外で現金書留を使う弔事の場面