葬儀の引き出物は、弔問客への感謝を示す大切な品物ですが、その選び方にはいくつかのタブーが存在します。良かれと思って選んだ品物が、かえって相手に不快な思いをさせてしまったり、非常識だと思われたりすることのないよう、避けるべき品物の特徴をしっかりと理解しておきましょう。まず、最も避けるべきなのが、お祝い事を連想させる「慶事の品物」です。例えば、鰹節や昆布(よろこぶ)といった、結婚式の引き出物で定番の品物は、縁起物としての意味合いが強いため、弔事には全くふさわしくありません。同様に、紅白の色遣いのものや、鶴亀、松竹梅といったおめでたいデザインのパッケージも厳禁です。次に、肉や魚といった「四つ足生臭もの」も、古くからの仏教の教えに基づき、避けるのがマナーとされています。これらは殺生を連-想させるため、弔いの場では忌み嫌われてきました。近年では、ハムや魚の加工品などがカタログギフトに含まれていることもありますが、ご遺族が直接選んで贈る品物としては、避けた方が無難でしょう。また、お酒などの「嗜好品」も、注意が必要です。故人がお酒好きだったからといって、日本酒やビールなどを引き出物に選ぶのは考えものです。お酒を飲まない方や、宗教上の理由で禁じている方もいるため、すべての人に喜ばれるとは限りません。贈る相手を選べない引き出物としては、リスクの高い品物と言えます。さらに、「商品券」や「現金」も、一般的には避けるべきとされています。これらは、お返しの金額が相手に直接的に分かってしまうため、露骨で生々しい印象を与えかねません。感謝の気持ちを品物に託す、という日本的な奥ゆかしさに欠ける、と考える方も少なくありません。ただし、非常に高額な香典をいただいた方への後返しとして、相手が本当に必要なものを選べるように、という配慮から商品券が選ばれるケースは、例外的に存在します。葬儀の引き出物選びの基本は、「消えもので、軽くて、日持ちがして、誰が受け取っても困らないもの」です。この原則から外れる品物を選ぶ際には、なぜそれがふさわしくないのか、という理由を一度立ち止まって考える冷静さが必要です。
葬儀の引き出物で避けるべき品物