還暦を過ぎた頃、友人の葬儀に参列したことをきっかけに、私は自分の最期について真剣に考え始めました。それまでは「死」を直視することを避けてきましたが、残される妻や子供たちに迷惑をかけたくないという一心で、いわゆる「終活」として葬儀の勉強をスタートさせたのです。最初は書店でエンディングノートを手に取り、見よう見まねで書き始めましたが、筆が止まることばかりでした。どんな葬儀にしたいか、誰を呼びたいか、費用はどうするか。具体的なイメージが全く湧かない自分に気づかされたのです。そこで私は、地域のカルチャーセンターで開催されていた終活セミナーに参加することにしました。講師の葬儀プランナーの話は目から鱗が落ちる内容ばかりでした。「葬儀は故人のためだけでなく、遺された人たちが心の整理をつけるための儀式でもある」という言葉が、私の胸に深く響きました。それからというもの、私は妻と一緒にいくつかの葬儀会館を見学し、事前相談を受けるようになりました。実際に棺に入ってみる入棺体験もしましたが、その閉ざされた空間の中で、不思議と心が落ち着き、これまでの人生への感謝が湧いてきたのを覚えています。勉強を重ねる中で、私は豪華な祭壇や大勢の参列者は望まず、親しい人たちだけでゆっくりと思い出を語り合えるような、温かい家族葬にしたいという結論に至りました。好きな音楽を流し、堅苦しい挨拶抜きで、笑顔で見送ってほしい。そんな具体的な希望をエンディングノートに記し、家族とも共有した今、私は以前よりも晴れやかな気持ちで日々を過ごしています。葬儀の勉強は、死ぬための準備ではなく、残りの人生をより良く生きるための指針を与えてくれたのです。