香典返しを用意する際、ご遺族がまず決めなければならないのが、その渡し方です。葬儀当日に手渡す「即日返し（当日返し）」と、四十九日の忌明け後に送る「後返し（後日返し）」、この二つの方法には、それぞれメリットとデメリットがあり、どちらを選ぶべきかは、ご遺族の状況や考え方によって変わってきます。まず、「即日返し」の最大のメリットは、ご遺族の負担を大幅に軽減できる点です。葬儀後に、誰からいくら香典をいただいたかをリストアップし、一人ひとりに合った品物を選び、挨拶状を添えて発送する、という一連の作業は、非常に手間と時間がかかります。即日返しであれば、葬儀当日にすべてが完了するため、ご遺族は葬儀後の様々な手続きや、自身の心のケアに集中することができます。また、参列者にとっても、その場で返礼品を受け取れるため、後日の受け取りの手間が省けるという利便性があります。しかし、デメリットも存在します。即日返しでは、いただいた香典の金額にかかわらず、あらかじめ用意しておいた一律の品物（通常、三千円から五千円程度）をお渡しします。そのため、高額な香典をいただいた方に対しては、いただいた金額に見合ったお返しができていないことになります。この場合は、後日、いただいた金額の半額から三分の一程度になるよう、差額分の品物を改めて送る必要があります。この「後からの追加対応」を忘れてしまうと、かえって失礼にあたるため、注意が必要です。一方、「後返し」は、古くからの正式な作法です。最大のメリットは、いただいた香典の金額に応じて、一人ひとりに対して、ふさわしい品物をじっくりと選んでお返しができる点です。感謝の気持ちを、より丁寧に、そして個別に対応したいと考える場合に適しています。また、忌明けの報告も兼ねることができるため、儀礼的にも非常に丁寧な形となります。デメリットは、前述の通り、ご遺族の事務的な負担が非常に大きいことです。どちらを選ぶべきか。現代では、八割以上のご遺族が、負担軽減を優先して「即日返し」を選んでいると言われています。即日返しを基本とし、高額な香典をいただいた方にのみ、後返しで丁寧に対応する。このハイブリッドな方法が、最も現実的で、かつ失礼のない選択肢と言えるのかもしれません。